先日、関東職業能力開発大学校にて開催された2018実践教育研究発表会に参加してまいりました。
今年は「ものづくり・ひとづくり・幸せづくり」というテーマのもと、教育訓練技法や教材開発等の成果が発表されました。
今回は、その中でも特に印象に残った東京大学生産技術研究所の1級技能士、涌井勇輔先生の発表をご紹介したいと思います。

涌井先生は15歳初の旋盤加工の技能士3級合格に挑戦され、高校在学中に技能士2級合格を果されており、現在は1級技能士として後進の指導にあたっておられます。
一体どのようにして若いうちにご自分の進むべき道を決め、困難にもめげず、目標を達成されたのか、その経緯について、発表されました。

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涌井先生は、高校受験で挫折を経験し、工業高校に進学されました。
その際に、15歳で旋盤加工の技能士資格を取得した前例がなかったことから、高校に入学してすぐ、「15歳のうちに技能士3級試験合格」を目標とし、チャレンジされたとのことです。
申し込み締め切りが4月に入学してすぐのタイミングのため、通常春の申し込み者はほとんどいないそうですが、涌井先生は入学前から準備を進めておられたそうです。

―すでに入学前からモチベーション高くご自分の進むべき道を定めておられたのですね。

残念ながら1回目の合格は逃してしまったとのことですが、高校2年で3級に、3年で2級に合格されました。
高校在学中に2級に合格されるのはほんの一握り。この年、高校生で合格されたのはたったお一人だったそうです。
合格までは、実技・学科ともに本当にとてもハードだった、スパルタだったとおっしゃっていました。

卒業後は東京電機大学に進学され、「早く教員になりたい」との思いから3年次に大学を休学し、多摩職業能力開発センターへ。
現職である東京大学の生産技術研究所に入職と同時に復学し第二部(夜学部)に転学、卒業されたそうです。
現職の選考時に書類選考を突破できたのは、20代前半の若さですでに2級を取得されていたことと、多摩職業能力開発センター時代に旋盤の競技会で入賞した実力が評価されたからとのこと。

―既成概念にとらわれず、ご自身の進むべき道を信じて、常に一歩先、一段上を目指して努力されることで、こうしたい、なりたいという思いを少しずつ、形にしてこられたのですね。

そして職務経験3年目の昨年、見事1級技能士資格を取得されました。
現在は、日本の最先端技術を支えるものづくりの現場を技術力で支える一方で、同僚・後進の技能伝授にあたっておられます。

―順風満帆に見えますが、高校受験や初回の技能士試験での挫折を乗り越え、ご自分の進むべき道をより明確にして集中し、努力してこられたことが実を結んだのだと思います。

以下、Q&A。

Q:なぜ、15歳の若さでそのような高いモチベーションを持つことができたのですか?

A:もともと「ものづくり」は好きでした。父が技術者であり指導者であったため、父のアドバイスが有効でした。将来像を具体的にイメージしやすかったと思います。

 

Q:この道に進んでいこうという確信が得られたのはいつ頃ですか?

A:本当にスパルタ訓練でくじけそうにもなりましたが、高校在学中に2級が取れたことで、人よりできることだという思いが確固たるものとなりました。その後、どんどん伸びてきたと思います。

 

Q:今後はどのようなキャリアを描いておられますか?

A:スキルが高くなってくると、「初心者の時にはわからなかったこと」を忘れてしまいそうになります。引き続き、後進を指導することにより、初心を忘れないようにしたいと思っています。

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涌井先生の発表を聞きながら、ミハイル・チクセントミハイの「フロー理論」を思い出していました。

「フロー」とは、時間の流れを忘れ、ひたすらそのことに没頭し、より高い結果を出すことができる精神的な状態のことを言います。

「フロー体験」が生み出される主要な条件は?

1.チャレンジとスキルのバランスがとれている
→今のスキルに見合った簡単すぎず難しすぎない目標である

2.目の前のステップに目標を持つ
→最終的な結果ではなく、目の前のステップの目標に集中する

3.それが良いのかどうか、直接的なフィードバックがある
→ステップごとの結果に対して、すぐにフィードバックが得られる

F1レーサーが高速スピードで運転中に、まるでスローモーションであるかのように見えたりするのがそれにあてはまるのだとか。
「フロー体験」は短期的なものですが、このような体験を多くすることができれば、幸せ度は上がってきますよね。

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発表中、涌井先生はとても生き生きとお話しされ、謙虚でありつつも、自信にみなぎっておられたのが印象的でした。
いつでも初心を忘れない、良き指導者になられることと思います。

技術者、指導者の先輩でもあるお父様がロールモデルとなり、先がある程度見通せたことも大きな力になったことだと思います。
そして、挫折のたびにチャレンジとスキルのバランスがよい目標を設定し、ご自分に課したことで、「フロー体験」が多く生み出されたのではないかと。
また、ご自分の得意な、好きな分野に道を定めた後も、それまでの自分を振り返り、できたこと承認することで、自己肯定感も醸成できていたのだと思います。

好きなことを仕事にするのは、とても難しいことだと思います。

親として、先輩として、「これが好きだ。これをやりたい」と言われた時に、気軽に「いいよ、やってみな」とは言えないことも多いです。「好き」と「できる」は違う、と。
でも、他の人より少し「できる、興味がある」ということを見出し、少しずつ上を目指して努力することで、「フロー体験」を増やしていく。
そうした体験をこまめに振り返り、自分を認めることで、自己肯定感を上げていく。
そうして道がついてくるのかもしれないですね。

自分のできることの、少し上を目指す。
チャレンジとスキルのバランスを取る。

毎日が「フロー体験」。それは無理かもしれないけど、少しずつ。

 

2級キャリア・コンサルティング技能士 高原 真美
#今年はお休みしたけど #来年はまた発表しようかな

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